パジャマを着てたって出来る自分のためのオシャレって?入院生活で出会ったおば様の素敵な考え方
こんばんは。
私は高校生の時に二ヶ月の入院をしていたのですが、その時に同室だったおば様のお話をしたいと思います。
がん患者のおば様
だいぶ体調も安定して、点滴の取れた頃にそのおば様は私の居る大部屋に入院してきた。
看護師さん達に久しぶりね〜と慣れた様子で話しながら、いずれも慣れた様子でロッカーに私物を入れていた。
どうやら、何度も治療のために入退院を繰り返しているようだった。
治療というのは抗がん剤治療だ。
おば様はお喋りで面白くてたまに寂しさを覗かせる人
おば様は、よくしゃべる人だった。
自分がまさかガンになるとは思わなかったと話していた。
異変に気付いたのは、お腹が出てきた太ったかな?と思っていたら、検査で腹水がかなり溜まっていてすでにガンだったという。
おば様は独身でガンになる前はキャリアウーマンだったそうだ。
「私は言ってやりたかったのよ、この給料泥棒って!」と男性と同じように働いても給料が低いことに腹を立てていた話や、「私には姉がいるんだけど、病気だからってあまり頼れないのよね。あっちには家庭があるから」と寂しそうに話してることもあった。
ちなみに、おばさんではなくおば様と呼んでいるのは、ぴったりハマる言葉が思い浮かばないんだけど、そんな雰囲気を持った人だったから。
おば様の入院中のおしゃれ
入院着は病院からの貸し出しの無地のものか自分でパジャマを持ってくる。
おば様は自前のパジャマを着ていた。
ある日、看護師さんといつもの様にお喋りに興じていたおば様はこんなことを言っていた。
「私ね、ずっと入退院してるでしょう?ずっとパジャマを着ていると滅入ってくる。でも、毎回、可愛い靴下を必ず用意して持ってくるのよ。ほら、いま履いている靴下可愛いでしょ」
おば様は声のトーンから、嬉しそうに話しているようだった。
おば様は可愛い靴下を履くことで、滅入る気持ちを靴下の明るい柄や色で少しでも前向きへと持って行っているんだ。
私は素敵なオシャレだと思った。
その姿はカーテンで見えなかったが、おば様の色のイメージは華やかなピンクやオレンジ色だったので、そんな靴下かなぁと想像していた。
おば様との別れ
おば様は短期入院で月に何度か入院するサイクルらしく、私より先に退院した。
ずっと同室だったので挨拶をしに行った。 行った、と言っても同室なので斜め前のベッドまで歩くだけだけど。
そう言えば、初対面の時にトイレの場所ツアーをしてくれたなぁとおば様との思い出が蘇った。
「〇〇さん、お大事になさってください。いままで同室でいろいろありがとうございました。」
「ありがとう、あなたもね。」
おば様はそう言って退院した。
おば様の後に入ったおばあさん
おば様の後に入れ替わるように入ったおばあさんは、足を骨折したようで車椅子だった。
なるべく大部屋内にあるトイレを使わせてあげてと看護師さんに言われていたが、おば様とトイレの場所ツアーをしたお陰で困らなかった。ありがとう、おば様。
メイクの力
ある日そのおばあさんの元にお見舞いへ娘さん夫婦と子供が来ていた。
おばあさんは娘さんが持っていた口紅を塗ってほしいと言って塗ってもらっていた。
すると看護師さんが来て、「素敵な口紅ね。表情が良くなってるわ〜」と言った。
おばあさんは笑顔で嬉しそうにしていた。
おしゃれのパワーはすごいなぁ。
おしゃれ出来るって嬉しいよね。元気が出るよね。
おば様の靴下の話は今もすごく印象に残っていて、それから明るい色合いの靴下をたくさん買うようになった。
あれからだいぶ経ったけどおば様、元気かなぁ。
病気でも出来る範囲でおしゃれしよう
パジャマを着てたっておしゃれは出来る。
ほんの少し明るい気分になれれば、それはなんだっていい。
人に見えないおしゃれ。自分のためのおしゃれ。
それはとてもとても素敵だと思う。